福岡高等裁判所宮崎支部 昭和30年(う)166号・昭30年(う)164号 判決
よつて原判決につき調査すると原判決は被告人李仁古の犯罪事実として第一の(一)(二)第四乃至第六の事実を掲げている。原判示第四の事実については別罪と刑法第四五条後段第五〇条の関係があるものとして刑の言渡をしているので茲では問題にならないが、主文第一項末段で判示第六の罪につき懲役二年六月及び罰金二千円に処する旨の言渡をしており、原判示第一の(一)(二)第五の事実については刑の言渡をしていない点に問題がある。原判決は同被告人に対する法律の適用について(判示第四の罪を除く)判示第一、第五、第六の所為につき各累犯の加重をした後刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条第四八条第一〇条により犯情の最も重い判示第六の窃盗の罪の刑に同法第一四条の制限に従い併合罪の加重をした刑期及び金額範囲内で被告人を懲役二年六月及び罰金二千円に処する旨説示してある。そこで原判決が主文第一項末段で判示第六の罪についてだけ刑の言渡をしたのは「判示第一の(一)(二)判示第五の罪につき」科刑するのを遺脱したものであるか或は又刑法第四五条前段第四七条の解釈を誤つたものであるかの疑がある。原判決が主文において同被告人に罰金刑を併科し擬律において覚せい剤取締法違反の点につき罰金刑を選択している点から考えると判示第一の(一)(二)第五の罪につきこれを主文に表示することを遺脱したのではないかと思われるが、そうであるとすればその遺脱は余りにも大きく結局審判の請求を受けた事件につき判決をしなかつたものといわねばならない。若し原判決が主文第一項末段において判示第六の罪だけを掲げた趣旨が判示第一の(一)(二)第五の罪につき科刑するのを遺脱したのではなく殊更第六の罪の一罪として処断したものとすれば原判決は刑法第四五条第四七条の解釈を誤つたものというべきである。何となれば併合罪に関する刑法第四七条の規定はその宣告すべき刑を量定するに当りその長期を定めたのに過ぎないのであつてその内の最も重い罪の一罪として処断する趣旨ではないからである。以上いずれの点からしても原判決は審判の請求を受けた事実につき判決をしない違法があるか又は法律の解釈を誤つた違法があり右の違法は判決に影響を及ぼすこと勿論であるから論旨は結局理由があり原判決は破棄を免れない。
(裁判長判事 甲斐寿雄 判事 二見虎雄 判事 長友文士)